ホットワインをイメージして作ったメープルスイート。生姜の柔らかいところだけを使い、賽の目に切った生姜の食感をぜひお楽しみください。パンケーキやバニラアイスに添えるのもおすすめですが、ローストしたアーモンドやピスタチオと合わせて赤ワインや洋酒のお供に。その際はお好みで挽きたての黒胡椒を。ローストしたお肉や燻製にも合います。
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山仕事備忘録〜東の藪’22〜直径80センチの大径木〜
果たして伐根直径80センチ前後の大径木が無事に倒れました。ポイントとしていた伐り株を越えず、望んでいたラインに落ち着いてくれました。これでじっくり乾燥させることができるし、搬出もごとごと安全に行えます。
必要な道具を揃え、ラインを定めるのに三週間を要しました。体力の回復を待つ必要もありました。とはいえ、プレッシャーが長引くのはしんどいものです。集中力がここぞという時に発揮できず判断が鈍るかもしれない。とはいえ、その間、検証を重ねることができました。前日まで二日つづいて風が強く更に足踏みすることになりましたが、結果的にはそれも良かった。改めて現場を整えつついろんな角度から見直し、最後は滑車を取り付ける立木を変更するに至りました。
前回同様、難しいのは倒れて着地したラインが最終ラインではなく目標ラインでもないことです。現場は上を通る道にカーブミラーがあるように、直線的に続く斜面ではありません。そしてライン手前が大きく落ち窪んで谷のようになっています。だからそのまま横方向に倒しても円に描き入れる接線のように土地に沿わず、また谷へ渡すようになります。下方に設けたラインは比較的カーブが穏やかであり、谷はこれまでに伐った竹や木で埋めてあります。
倒れてからの動きをイメージする。まずはじめに木の先端である梢が着地する。立木と立木の間にがっちり噛み込んで固定されれば、そこを支点として、扇が開くように元口から樹幹は谷側へ動き、ポイントとしている伐り株で止まり、目標ラインに落ち着く。前回のように予想以上の力で跳ね上がることのないよう、角切りをしておきます。ライン手前に高く残してある竹の伐り株がクッションになってくれることを期待。いずれにせよ、ツルは衝撃で引き千切れるでしょう。
最終決定したラインをメージャーで測る。滑車を取り付ける立木まで約15メートル。手前の伐り株に激突せず、寝かしてある木の元口付近をクッションに、そして奥にはもうひとつ伐り株がライン下方、目標ラインとの間にあったので斜めに切り下げておきました。
さらに引いて、下を通る道から。樹高は20メートルをゆうに超えるでしょうから、梢が道に被さることになります。写真上は当日、牽引具をセットしたところ。中央が倒す木。その右隣に滑車が取り付けてあります。その木と倒す木を挟んで左隣にある立木との間に倒す。左、谷側にそれると、水平ラインを交差し、梢が意図せぬ具合に引っかかって強い緊張を生む。山側へそれても厄介です。樹幹が斜面上に不安定な形で止まり新たな危険を生む。ここが何となくだと、本番作業中、肝心の受け口が定まらず常に漠然とした不安を抱え続けることになります。
写真の真正面に倒したい。両側にある立ち木の真ん中ではなく、滑車を取り付けた山側よりであることがポイントです。樹幹はわずかに谷側へ曲がりまた山側へ直ろうとしています。重心は若干谷よりだと思うので、伐倒ラインを意識的に谷側へ寄せることはしません。
写真下、反対から見る。ありがたいことに滑車を取り付けてある牽引ライン正面の木も梢が山側へ反っているから、ギリギリを狙ってもうまく避けてくれるでしょう。
かつて経験したことのないサイズ。60センチをゆうに超えるだろうくらいに思っていましたが、事前にチェーンソーを持って、どう切るか足場の確認も含めて木に当ててみて目を疑う。バーの倍近くかそれ以上あります。胴回りを測ってみると2メートル40センチ以上。受け口のラインだともっとあります。直径×3.14=円周に当てはめれば79センチ前後と出ました。否が応でも重圧がのし掛かります。
足場は竹の伐り株とその間に木を渡した簡素なもの。受け口も追い口も谷側から正対できません。どうするか。朝までじっくり布団の中で考えます。正対できなければ突っ込み切りはできない。チェーンソーの特性を思い出して、一番無理のない方法をあれこれ考えます。本を読んで答えを探そうかとも思ったけれどやめました。
当日は風が止みとても静か。牽引具のセッティングも順調にできました。改めて、今回ぬかってはならないポイントを思い出す。受け口の下切りの角を欠くこと、そして芯を入念に切っておくこと。一息入れてから伐り始めました。思っていた以上に受け口の調整が難しい。谷側からだと胸よりも高い位置にあり、チェーンソーを逆さに構えて山側からのラインに一致させるのは至難の業です。目で確認しながら進めることさえできません。なので手鋸とヨキ、そして山側から回りこんでチェーンソーの切っ先で調整しました。手鋸はいつも使っているものは寸足らずなので、錆び付いていた伐採用であろう年代ものを事前に目立てしておきました。それなりに切れるようにしたつもりが思うように切れない。アサリの具合が甘いのか。しかし試し切りした時はこんなではなかった、、、何か不安が残ります。
深さ20センチで一旦うまく作れました。もう良しとしたいところ、思い直して25センチまで深くしました。根張りの絡みでツルの強度に心配が残るからです。水準器を使って水平を確認します。規模が大きくなればなるほど、ちょっとした誤差が大きなミスに繋がります。
追い口についても水準器を使って目印をつけ、いざ、刃を入れ始めました。感覚による水平と目印のと間に誤差はなく順調に進んでいます。が、途中であろうことかソーチェーンが音をたてて切れてしまいました。はじめてのことに目が点になる。どこからどこまでを切ったところかというと、写真下の伐り株に追い口谷側から手前に向けて斜めにバーの形が連続するように跡がついているところ。まだ半分も切れていません。現場を離れるわけにはいかないので、あとは鋸でやるしかありません。目立てをしておいて正解と言いたいところですが、替え刃を用意していなかったにがそもそも甘い。嫁におにぎりを頼みました。
体力が急激に消耗していきます。生きていると木はこれほどまでに違うものか。まるで切られたそばからその傷を治そうとするように体液が滲み出し肉が盛り上がり、まるで鋸が取り込まれるようです。引くにも押すにも力がいる。しかし、力任せにしてはいけない。今一度気を引き締めなければ。とはいえふらふらです。寸足らずの鋸である故に思うようにいきません。谷側から山側から切り込んでいきますが、中心付近が切れ残り、直線にすべき追い口のラインがハの字になります。そんな状態で無理をして楔を打つのは好ましくない。
楔はチェーンソーによる切り口に打ち込む想定だから鋸による切り口そのままでは狭くて入りません。追い口の真正面一個と谷側に一個の二つではじめる。途端に谷側の楔が割れた。替えを打ち込み、少し持ち上がってきてから山側を入れる。これで楔が三つ。と、今度は、真ん中の楔を打ち込んでいる木口が裂け上がりはじめた。根張りだからなのか、はじめてのことでわかりませんが奥の方は大丈夫そうだし楔は順調に入ります。次から次へと思わぬことが続きます。深呼吸をして下腹に力を込める。新しい楔を2つ追加。追い口を切り進めつつ、合計5つの楔で打ち進め、牽引具で追いかける。決して、牽引具の力で強引に倒そうとしてはならない。
明らかに谷側が重い。比較的厚めに残していた山側のツルが先に音を立てた。いよいよ重心が谷側にあることは明確です。谷側のツルを重点的に切り進め、楔を打つ。まだ裂ける音はしません。一連の作業を繰り返す。ようやく谷側が鳴った。山側も追いつく程度に進めます。
本格的に裂ける音がして倒れ始めるまではあっという間でした。かかった枝もなんのその、自重で折って折られて倒れました。圧倒的な量感でした。恐ろしさの余韻はなかなか消えません。
実は作業途中、チェーンが切れたあたりから地域のお歴々が観にきていたのです。この手のプレッシャーには大丈夫になりました。楽しそうにしてくれているのがこちらも嬉しい。無事に倒れたことを見届け、しばらくお喋りをしました。明るくなったことを喜んでくれているようです。色々話を聞かせてくれました。やはり、集落に藪が迫っているのは火事のこともあって不安に思っているそうです。そして、こういった太い木ほどプロに頼んでも伐ってもらえないとのこと。つまり、業者からすれば、藪を片づける余計な手間がかかるわりに、虫食いや腐れなど、材としてお金になるかどうか確証が持てなかったり、集落の中にあってリスクが高かったり、割に合わないから請け負えないということなのでしょう。どうしようもなくそのままになっている現状を不安に感じているのは同じだったのです。
小学生の時、倒木更新という言葉を国語の授業で習いました。寿命尽きた木が倒れ、新たな芽を育むという話です。何故伐るのか。まず大前提として、木もまた永遠ではないということです。木は人を生かしもすれば殺しもします。
改めて、受け口の正面を二等辺三角形を使って確認する。ゲートとした立木の間、山側ぎりぎりを狙えていた。
狙ったところに着地後、樹幹が谷側へ落ちるに従い梢先端は、写真中央から山側へ角度を変えた。
伐倒方向の直径は85センチ。
受け口の深さは24~25センチ。(基本は直径の4分の1以上、大径木の場合は3分の1以上とされる)受け口の深さはツルの強度、追い口に楔を打ち込む奥行きを考えて決める。
ツルの幅は谷側が10~15センチ、山側が17~18センチ。(基本は直径の10%とされる)今回は斜面横方向に倒すので基本より強度がいる。十分な厚さから調整を進めた結果。
ツルの高さは17~18センチ。(基本は直径の15%~20%とされる)今回は少しでも倒れる勢いを緩めるため、ツルに粘りを持たせるため、高めに設定した。
側方から測った直径は71センチ。
何故チェーンが切れたのか、改めて問うて、はたと思い出す。受け口を入れ始めた時から妙に切れないおかしいとは感じていたのです。何か金属にあたっているような、刃が滑って食い込みが悪いような。異音が混じっているようにも感じました。しかし、明確な原因が浮かばなかったので作業を続けました。
一晩経って思い至る。デプスゲージの調整が甘かったのではないか。デプスゲージとは名前の通り、刃が木に食い込む深さを調整するもの。大工さんがカンナの刃を金槌を使って台木からの出具合を見るそれです。前日の目立てで確認をしてはいたのですが、自分の認識が甘かったようです。燃料満タン1回分ほど使って、最後の方は若干切れ味が落ちた感はあったものの特に違和感はありませんでした。そして当日、念のため再度目立てをしたことで、気づかぬ程度だったのが決定的になってしまったのでしょう。これまで時々削って下げたことはあったものの、さほど必要性を感じていなかったので、勝手にバランスは取れるもので敢えて調整する必要はないのかなくらいに思っていました。
左右の刃が交互に連結してるソーチェーン。1箇所だけ同じ側が続くのだが、そのところが切れた。
追い口を切るときに出た切り屑。それほど悪くはないがよくはない。
受け口の切り屑は繊維に対して斜めに入るので粉っぽくなる。ちなみに、繊維に対して平行に入れると下の写真のように切り屑は長くなる。前日、樫で予備の楔を作る際に出たものだ。この時点ではさほど悪くはないと思ったのだが。
あるいは、チェーンを張りすぎたのか。いずれにせよ、今後、気をつけるいい経験になりました。
厄年が終わりました
前厄、本厄、後厄の三年がようやく終わった。そんなことはあまり気にしないたちだった筈が、あまりにいろんな出来事があったので、終わったと、思いっきり断ち切り、門出を祝いたい気持ちになったのだ。とても晴れやかな陽気。
誕生日に雨風食堂
で贅沢に昼からお酒をいただいた。
この美しい景色。これに揚げ出しが追って登場したが、もはや写真を撮るどころではない。
なんとも美しい酒器。純米吟醸がキリッと冴えて染み渡る。
牡蠣しんじょ、脂の乗った鮭の西京焼、南瓜と椎茸の煮〆、切り干し大根は優しい味、蕪の甘酢漬けはあっさりと、菜花の和物が春を告げる、白ネギのお浸しにはお酢も効いていてさっぱり。
このバッテラが身も柔らかく、シャリもマイルドで美味しいのだ。ワサビは丁寧におろしたものなのだから贅沢だ。
せっかくの熱々を冷めないうちにいただく。
もずく酢が嬉しい。だからお酒が進むのだ。
誠に至福のひとときであった。皆様も雨風の昼呑み、いかがですか。
20年ぶりの再会
学生時代のインターンシップでお世話になった農業法人グリンリーフ株式会社の先輩が当時3歳だった社長の息子さんやスタッフの方々を連れて会いにきてくれました。今後ミールキットという1次加工済みの野菜からお肉そして味付けに至るまでセットになった商品を拡充していくそうです。インターンシップでは畑仕事に限らず、グループ会社野菜くらぶの独立支援プログラムを通じて新規就農するケースに群馬から遠路、青森まで同行させてもらい、漬物加工も体験させてもらいました。高品質であるということ、安定供給のシステム、市場のニーズに応えるということ。大規模であり、自分とはあまりにもかけ離れていたからこそ、それが今後の主流であると考えた時、自分はどうするか具体的にイメージする上で常に基準となってきました。中途半端なことでは意図せず同じ土俵に上がってしまうことになります。
とにかく当時の自分はしっちゃかめっちゃかでした。全て農業のためとはいえ、体力づくりで始めたトライアスロンのレースと合宿への参加、県が用意してくれた農業を学ぶ通信講座と実地研修、そして農業法人へのインターンシップ、そして卒論を最後の一年に詰め込んでいました。一方で、家に届く就職説明会やリクルートの情報紙は全て破棄。捨てても捨てても送られてくるそれをまた捨てるという行為は、自分の気づいていないチャンスを捨てるようで、またレールから逸れる覚悟を執拗に迫られるようで、結構しんどいものでした。
自分はなぜ農業だったのか、どんな暮らしに憧れてきたのか、まだ何も実現していないそれは自分の中でさえ明確でなかったし、言葉にならずもどかしい思いでした。20年ぶりの再会を果たし、今の自分を暮らしや畑を見てもらうことではじめて伝わると思いました。
数年前、といっても、もう8年ほど前になりますが、高知県へ公演にきた社長さんがわざわざ探して連絡してくれました。独立してまだ数年、試行錯誤の只中でその時もしっちゃかめっちゃかだったのですが、、、。それでも、時代の本流を行く人が、逸れに逸れて細々やっている自分の農業に共感を示してくれたことがとてもありがたく、自分もそうありたいと思いました。こうしてご縁が続くことに感謝しています。
山仕事備忘録〜東の藪’22その2〜
だいぶん片付いて空が見えてきました。いよいよ直径70センチ近くになろうかという大径木のラインを決めたい。その前段階として、隣の木、写真上の真ん中を倒します。シュロの葉で隠れていますが、ポイントとなる伐り株を高めに残しました。その株よりもできれば山側に倒したい。しかし、掛かっている枝を少しでも避けるには谷側へずれても仕方がない。
楔は枝にかかるところまで順調に効いていることを確認。そこから牽引具を使う。かなり引っ張っても掛かった枝にしっかり受け止められ葉さえピクリとも動かない。少しでも抵抗を少なくするために追い口を再調整し、牽引具のセットをやり直してなんとか倒れました。
数千円の簡易なウィンチを使ったこのやり方では限界かもしれません。一回のセッティングで引ける長さはせいぜい1メートル。なので場合によっては何度かやり直さなければならない。その間、楔を効かせているとはいえ一度緊張させたものを緩めてまた張るという作業は不確定要素を自ら作る無茶な行為だし、牽引具の取り付けについても、やり直す際の引きしろをとるために倒れる側に寄って作業することになります。今回12ミリのポリエステルロープはカンカンに張り、滑車を固定していた結びがいつになく固く締まっていました。
今後はこのやり直しの必要がないチルホールという牽引具を構える必要があります。となれば、それに付随する道具一式もまた近所のホームセンターでは揃いません。かつては隣の本山町に専門の機械屋があったのですが今はもうありません。繰り返し本を読み込んでネットで注文します。実は当初の10年ほど前から気になってチルホールをネット検索し続けてきたのですが、欠品続きだったたり情報が今ひとつ不十分だったり、門外漢には敷居が高くてどこで買えばいいのか何を揃えるべきなのか定まりませんでした。昨今は自伐(型)林業が普及して新たな需要が出てきたのか、改めて検索すると多くのサイトで在庫ありになっていたし、判断材料とすべき情報も充実してきました。誰に相談できるわけでもないので助かりました。
伐っている最中にエンジンが止まってしまうような、中古のチェーンソーではじめて気がつけば10年。林業に携わっていた友人に一度やって見せてもらってからは自分なりに試行錯誤してきました。下積みを経て、今ようやく新たなスタートラインに立てた気がします。解らないことは依然としてありますが、最低限、どういう行為が危ないのかを知り、やり直しのきかない一手一手について、木の反応を確認しつつ進めることで取り返しのつかない事態にしないということ。立ち木の状況をいろんな角度から何日かけてでも事前に検証すること。そういった抑えるべきポイントを蔑ろにしないことで恐ろしさの質を変える。とはいえ、絶対に大丈夫ということはないから、道を止めて人が入らないようにしたり、倒すところを整えたり、前段階の基礎をしっかり固めることに注力するのです。
チルホールという林業を仕事にしている人なら当たり前であろう装備について、やはり必要だというところに至ったのは大きいです。時間をかけて良かったのは、パワーのある道具を使うことによって生まれる危険を少しずつ身をもって経験できたこと。簡易なウィンチとはいえ引っ張る力は1tあるそう。ロープが切れ、牽引具が飛んできて怪我をしたこともあったし、倒れるときの軌道が変化しかえって厄介な状態になることもありました。道具はその必要性を実感してから一つ、また一つ買い足してきました。たしか、滑車を組み合わさずに使ったこともあったような、、、。
この日は5株倒したうち、かかり木は3株。何度もやり直さなければならなかったので体力的にも精神的にもキツかったです。等高線上に詰んで植えられているものを水平方向に倒したいので仕方がありません。
大工のお兄の仕事を見るにつけ、その時その時、無い答えを自分で探す仕事の積み重ねこそが作業員ではなく職人として結実するための頑張りどころだと思いました。なので、山仕事について、これまで自分の仕事として存分に試行錯誤する場に恵まれたことがやはりありがたいと思います。
何かを身につけるにはそれ相応の時間がかかるし、それ以前の下積みも大事です。私は学生を卒業後農家で6年間修行させてもらいましたが身につけられたものはごく限られていました。農業という日常を身体に染み込ませつつ、自分はどうやりたいか、またどうありたいかを模索するために、現場の作業員としてその場に居させてもらう年月。いわば下積みの時代でした。その甲斐あって独立した1日目からやるべきことがわからず立ち尽くすということはなかったけれど、只ようやくスタートラインに立てたという思いでした。
話は戻って、倒れる際の挙動を思い返してみる。着地した後たわんで樹幹が跳ね上がり、伐り株に乗り上げて谷側へ落ちたように思うが、定かではありません。やはり、牽引方法に不安があったので、退避中、倒れるところを冷静に確認できなかったのです。
受け口の下切りが水平よりも谷側に下がってしまったことが作用して、予定ライン(写真下、受け口の正面を二等辺三角形を使って確認する)より谷側へずれたのかもしれません。しかし、伐倒前の方向確認で見上げれば樹幹は山側に反っていたので、やはり、着地した時点では伐り株より山側であったはずです。着地した後、なぜあれほど撓んだのか。それはラインの中ほどが尾根のように出ており、その先はまた谷のように落ち込んでいるためでしょう。しかし、それだけが要因ではなかった。より重要だったのが、受け口の下切りの角を欠いていなかったことです。谷を渡すように倒すことになる今回、つるが引きちぎれずに元口が株に残るのはかえって厄介だと思い、あえてその角切りをしなかったのですが、それが仇になりました。樹幹が尾根部分に着地した後、梢が思っていた以上に大きくしなったのは覚えています。問題はもう一方の目視できなかった部分、樹幹は株元から千切れて下に落ちたことで尾根部分を視点により大きな力が働き、伐り株を超えるほど跳ね上がったのでしょう。ではポイントとした木を事前に伐るべきではなかったか。いや、かかり木要素をあれ以上残したくはなかったから伐ったのです。
しっかり安定しているし搬出する時にも能率が良さそうなので結果的には良かった。が、次の木についてはよりシビアになってきます。我が家の搬出は重機を使わないと言う意味で全て手作業。自家消費用の薪にするために40〜50センチに玉切りし、場合によっては現場で割って運び出します。玉切りしたものが転げ落ちないようにするため、足場や木を寝かす状態には念には念を入れる必要があります。隣り合う立木をゲートに見立て、間を通るライン上にできるだけ多く積み上げて壁を作りつつ、斜面との間を埋めて足場を作る。だから狙ったラインを逸れてしまうと、その一本は良かったとしても、その後が手詰まりになってゆくのです。竹なら持ち上げて修正することも可能ですが木は重くてそうはいきません。例えば仮に、次の大径木がこのラインをそれた木の上に更に交差して倒れた場合、重なったところを支点に谷側に浮いた樹幹(元口から数メートル)は、圧倒的重量をもって安定を欠き、危険を生む要素となります。従って、再度ミスをして、ポイントの伐り株を越えて谷側に落ちることは、絶対避けねばなりません。
さらにしっかり枝が掛かりそうです。倒したいのは、写真下の伐り株と伐り株の間を通る、最後に倒した木の一つ隣のライン。倒れる際にどのように動くかイメージする。そして、道具を新たに揃えなければなりませんが、自分にとっての必要十分をどう組み合わせるか。その晩はほとんど寝られませんでした。しばらく間を開けようと思います。
山仕事備忘録〜東の藪’22その1〜
畑の東側を覆ってきた藪につき、いよいよ本格的に手を入れることにしました。ついでにきゅうりなどに使う支柱を100本作ります。孟宗竹一本で支柱は一本しか取れないので100本以上伐ることになるでしょう。作業の中心はいかに始末をつけるか。事故を防ぐためにできるだけ長い状態で安定するラインに積み上げ水平な足場を整えます。なので、一日にせいぜい10本〜20本といったペース。手鋸でごとごと作業します。
植林に侵食した竹を伐り出すのであとには杉や檜が残ります。既に虫に食われていたり朽ちたりしているものがほとんどで、危なくてそのままにはできない状態。最後には倒す前提で段取ります。それにしてもすごい急斜面。
藪の中で枝がほとんど無くなりまばらに残った杉。台風に耐えられるとはとても思えない。細く見えて、これでも直径は40センチ前後、高さは20メートルにもなるのでかなりの量感になる。枝がなくてツルッとしている分、下手に倒すと滑り落ちて事故を起こしてしまうかもしれません。細い方がかえって難しいこともある。右から二番目の木については倒す方向、立木の状況から牽引具もロープも使わない方がいいと判断。吹きっさらしにポツンと立つそれを見上げれば、形容しがたい量感で迫ってくる。久しぶりにふるふる足が震えた。「おいおい。」
この日は、倒す道を作るためにもこの曲がり偏った木から始めた。追いヅル切りをするにはどうも細すぎるよう。慣れないことを微妙なところでするよりも、いつものやり方で慎重に。
真下に立って倒す方向を見る。かかり木になることは避けられない。真ん中を狙う。少し左にずれて隣の斜めに傾いた一株目と2株目の間に入ってしまうと樹幹に挟まってどうしようもなくなる。
狙い通りのところに掛かった。ここからロープを使って倒す。混み合った中に道ができる。
直径60センチ以上の立派なものが2本あった。しかしその並びには樹皮が黒ずんで明らかに危ないものが。
この木を伐るためには立派な2本を伐るしかないように思うけれど、果たしてどうしたものか。それは伐るのも大変だけど、危険のないよう始末するのが大変だと思う。
この密植された中のどこに倒すか。まだ道は見えない。
少し引いたところから見ると現場はこんな感じ。奥のカーブミラーが立っているところが三叉路になっていて暗く鬱蒼としている。車を運転すると明暗の変化に目がついていけない。ちなみに、生姜の畑に降りていく道はちょうどこの藪の下になる。草を積んでバックで下るには暗くて路肩が見えない。いずれも冷や冷やしながら通らなければならなかったので、左の山側の手前4株は昨年の春、集落の道作りの時に伐った。
2株は直径40センチでガードレールのある谷側に大きく偏重しており、真ん中の株は直径60センチ以上の大径木で形が歪、それらが一株のように密接して生えていた。枝が絡みあい、足場も悪い。そして、倒すべき方向に許される誤差はない。一方は山側を支える石積みの角。もう一方は谷側のガードレール。道を止めてもらうためとはいえ、難儀する中、人が集まって大変だった。
話は遡る。事前に手前の藪を片づけて算段をつけ、道作りの担当者に相談したところ、それなら集落内のプロに頼んだ方がいいとこちらの意に反して進みそうになった。それを頑なに遮って、自分でやらせてほしいと押し切った手前、失敗は許されない。段取りまでしておいて、最後自信がないから人に頼んだという形になってしまえば、今後自分で伐れなくなる。それはつまり、いつまで経っても思うように進めないということ。伐るべき支障木はまだまだある。
この春も山側残りの3株を伐らせてもらう予定にしている。厄介なことに電線か何かのケーブルがそばを通っているし斜面上からどう搬出するかがまた大変。
四十代のうちにこういったことはある程度方をつけておきたい。竹は整えた竹林で採れるようにしたいし、薪は浅木でこしらえたい。でないと体力がもたないし危なくて不可能になるから。こないだの火事の時は麦山の防火水槽では足りなくなったので、川から下の集落の水槽を経由して水を上げていた。その際、これまで自分が手入れを続けてきた畑へ降りる私道を使っていて、その道が荒れたままだったら果たしてどうなっていたか。延焼し山火事になっていたら放水は届かずどうしようもなかっただろう。裏山は集落の水源だ。以前消防団に属していたとき山火事の現場に行ったことがあったが尾根まで全て燃えていた。やはり自助努力だと思う。
先日嬉しいことがあった。同じ麦山の方から竹藪の手入れを頼まれたのだ。周囲には少なからずよく思わない人もいるだろうと思いながらやってきた山の手入れだったので、ちょっとほっこりした。
山仕事備忘録〜東の藪’22〜ベンチづくり〜
伐り倒したままにしていた杉でベンチを作ることにしました。急斜面にあるので、自力で運び出すためにはいずれにしても割るなりして転がらないようにしておく必要があります。
厚さ15センチ、横幅60センチ、縦300センチの厚板ができましたが笑ってしまうくらい重くて全く動かない。180センチにして、軽トラの荷台へ乗せることに。しかし、後少しのところがどうしても動かない。にもかかわらず、折悪く向こうから来た車を通すのに苦労して上げたものを下ろして、急がなくても良いよと声をかけてもらいながら、よいしょよいしょと道脇に退けて、車を退避させてまた一からやり直し。再度苦労して後少しというところでまた車が来て、、、普段ならほとんど通りのない道に何故という思いで苦笑いが出てしまいました。日暮れも近くこれはいかんというので断念。牽引してなんとか家の敷地まで運びました。いい加減、力任せは卒業しないと。
明けましておめでとうございます
本日出荷の生鮮
気になっていたところを片付ける
腐食して取れたままになっていた風呂の焚き口と煙道の掃除口を修繕しました。慣れない左官仕事。粘土のように整形できるものと思っていたら大間違い、自重で次第に垂れてくるものなのですね。ひとつひとつ型枠を拵えて隙間を埋めてどうにかこうにか形になりました。
隣家の火事により心身ともまだ正常とは言えない状態です。火事のあった夜中の1時頃になると決まって目が覚めたり、何かの物音に反応して寝られなくなったり、夢にみることもあります。これでは身が持たないことはわかっているのですが、寝ていても何かあればすぐ気付くようでなければとも思います。
野良の2匹、ここ最近はチー坊が寝床を自分のだと主張して喧嘩になることもしばしばです。元来穏やかなQ太郎は困惑顔。そもそも我が家という餌場を教えてあげたのはQ太郎なのだけど、チー坊は自分もうさぎを獲れるようになったことで勢いづいてるのか。。とはいえ、確かにあかんタレなチー坊もそれなりにゴツくなってきました。嫁にひしと抱きつく肩周りがもうおっさんです。おいおい。しかし、寒波の間はご覧の通り。