報告が遅くなりましたが、三月に入った頃、今年作付けする畑に行くと、この畑もその畑も、なんということでしょう、予定していた畑のほぼ半分が全面踏み荒らされ掘り起こされていたのです。更に2か所、排水の為に切っていた溝が踏み込まれヌタ場になっていました。
いく農園が借りている土地は三地区に分かれていて、それぞれに解決すべき問題はあるのですが、この一つは猪が年々その範囲を広げ、ついには鹿に遭遇する処になっていました。年末まではまだ穏やかに充実した畝が並んでいたのですが、、、
一昨年はきゅうりと人参を作付けしたこの畑も辺り一面荒らされました。(下の2枚はその時の写真)
さて、さて、どうしたものか。ショックでしばし呆然としました。掘り起こされ踏み込まれたことで、不耕起栽培で手入れをしてきた年月が無駄になったとは思いません。骨の折れる仕事にはなりますが、修復することは可能です。しかし、修復し作付けしたとしても、また繰り返し荒らされることも十分に考えられることで、何か対策を取らなければいたずらに消耗するだけです。この地区は特に高齢化が進んでいるようで、何か具体的な獣害対策を取っている話も聞きません。
いく農園では、土作りのために二年一作、休ませる間は草を極力生やしてきましたが、その茂みが獣との境界を近づけ害を広げることになるならば、やり方を変えざるをえません。今回やられたところ一帯は山に隣接し、高齢化によってあまり手入れがされず茂りがちな土地が分布しています。刈敷きで土が肥えてミミズが増えること、水が浸みだすところがヌタ場になることが、イノシシを呼ぶ直接の原因でしょうから、私の畑は格好の場所です。柵で囲うのは地形的にも労力的にも経営的にも現実的ではありません。聞けば電柵は、その際に生える草を処理するとき、草刈り機を使えないので結局は除草剤を使うことになるのだそうです。
声の掛かった土地から借りるしかなく、結果的に耕作地が複数の地区に分かれたのですが、リスク分散という意味でそれをよしとしてきました。かつてショウガを荒らされた地域では里と山の境に柵が張り巡らされ、その内側に残っていた個体は猟で仕留められたのでしょう、その年以降は出なくなりました。そのおかげで、今回のハプニングにも被害の及ばない代わりの土地があるからこそ冷静に対処できたのです。しかし、一方でそこに住んでいないが故に地域との関わり方が難しく、イノシシの被害情報が事前に入ってこなかったり、高齢化が進み担い手が不足し、集落営農として求められる負担が重かったり、複数の地区に所属する難しさを感じる事も出てきました。リスク分散はできるかもしれないけれど、それぞれのリスクについて充分な予防や対処ができなくなると感じるようになりました。
結論としては、今回被害を受けたところは残念ではありますが作付けをやめて刈り場とし、これまでよりも頻繁に刈る、そして、いずれ自分で猟ができるようになる方向を模索することにしました。まだ何も知りませんが、木を伐ることを覚えるように、獣害を自分で防ぐ手立てを見つけなければ、やはり農業で食べていくことはできないのだと思います。
刈り場についてはこれまで足りていなかったこともあり、また農地を集約することも課題でした。いずれにしても、今のやり方は体力勝負で若いうちだからできることなので、やり方を変えるしかなかったのです。多少無理をしてでも軽トラを買って、よりたくさんの刈り草を運び土を充実させる方向です。40歳を手前にしてこれからの20年を考えるとき、強烈なイノシシの害が思わぬきっかけとなりました。作付けできなくなったのは耕作地全体の約3分の1にわたります。それだけの面積を刈り場にするなどもったいなくて、こんなことがなければ割り切って考えられませんでした。結果的にはとてもよかったのです。
刈場から運び積んでおいた草を細断する作業。今後、いく農園における土作りの基本となります。