ブナの森でテント泊
紅葉シーズン深まるにつれ、どっぷり山に浸かりたい欲求が高まってきました。昨年登った三嶺を含む剣山系は熊出没情報が目立つので、地元の山へ。汗見川沿いを登っていきます。(11月3日) 眼下の深い谷を流れるのが汗見川。伊予三島へ通じる峠の、その過酷さからついた名前と聞いたことがあります。
12時過ぎに登り始めたので、すぐ陽が傾いてきました。普通ならば下山する時間。すれ違うベテランさんにすれば今から?という感じ。テン泊であることを告げると得心の笑みが返ってきました。早く目的地に着かねばなりませんが、暮れゆく中を歩くのは好きです。遠くで鹿が鳴いてます。 今回は佐々連尾山(さざれおやま)の先にあるブナの森に泊まる予定。張れるところがあるのかどうか、行ったことがないので不安は残ります。水場はないので二人で4ℓ用意しました。(結果、一泊二日で残ったのは0.5ℓ)
とてもいい場所が見つかりました。無事に張り終え、さて、これからが楽しみの時間。下山を急ぐ必要はないのです。
夕食は弁当。予定では昼が弁当で夜は米を炊いてカレーだったのですが、仕事の疲れが残っていたため朝は無理をせず、登りはじめが12時近くになったので昼は行動食とパンで済ますことに。ロープ場が所々あるアップダウンを4時間ほど歩いた後、煮炊きせず食にありつけるのはかえって助かりました。ご飯を食べながら、最近ニュースになっている遭難について何気なく話していると、気づけば嫁から笑顔が消えています。しまった、またやってしまった。とにかく、すまん。根が健やかな嫁はすぐに気持ちを切り替えてくれるので助かります。やれやれ。
張る際にあたりを調べても鹿の糞は見当たらないし、気になる気配もなかったと思います。逆に、静かすぎるほどで、風も、上では強く吹いているのに此処はそよぐ程度。気温も過ごしやすい。もちろん、私たちの他に誰もいません。何も不安になる必要はない筈です。とはいえ、私だってそれなりに緊張はします。テント泊はどうしたってワクワクドキドキ。
どこでも眠れる人はいいのですが、私も嫁も苦手。下山後に我が家の布団に入った時が極楽と思う方です。毎度長い夜を過ごすことになるのですが、今回は何も考えず只うとうとする時間を楽しもうと思いました。夕食後はまず横になることに。やはり眠れません。
テント内に敷く銀マット、今回は銀の方を表にしてみたのですが、それがいけなかったようで、わずかな傾斜なのに、その上のエアーマットが滑ってすぐズレ落ちてしまいます。直してはズレるの繰り返し。一方の嫁は何の問題もなく安定している様子。さぞ、横で鬱陶しかったことでしょう。輻射熱があるから銀を表にするという話ですが、暖かさはあまりかわらない感じです。そもそも熱源の無いところでは?ですし、下から上がってくる湿気や冷気をまず防ぐという目的では、やはり銀のフィルムが下の方が理にかなっていると思うのですが、、、。結局敷き直すことにしました。
狭い中、荷物をどこに置くかも重要です。私の場合は毎度ザックを空にして足を突っ込むのですが、今回は腰痛が気になってしっくりきません。足元に寄せたところ、それも具合が悪い。整体で膝下にクッションを入れてもらうことを思い出して、そのようにするとようやく落ち着いて眠れるようになりました。枕は取り外しのできる雨蓋に衣類を詰めて。そうこうしているうちに、いよいよ夜の帳が下りたようです。
外に出れば、月明かりに照らされた静かな森が佇んでいます。紅茶でも淹れようか。アルコールストーブで湯を沸かします。もみじ饅頭が美味しい。カサカサ葉の落ちる音がします。
さて、冷えないうちにテントに戻りましょう。寝袋に包まりながら星空が見れたらいいのに。また鹿の鳴き声がしましたが、ビバークの時と違い、蹴られてテントが谷に落ちる心配もないので、まあ落ち着いて寝られそうです。
本日出荷の生鮮
今日も山へ柴刈りに
腰痛明けの山行
初めてビバークした山へまた来ました。
四十にして惑わず、という言葉を改めて紐解けば、「惑う」は、ただ、おろおろするという意味だけでなく、
「平常心・(初志)をかき乱すような事に心を奪われる」
とあります。倫理(行動の規範としての道徳観や善悪の基準)や良識(健全な判断力)では動かない世間において、平常心はいかに揺らぎやすいことか。
先日友人からあるショックな出来事を聞かされたのですが、歳を重ねるごと色濃くなっていく個々の人生、仕方がないと思いつつも、つい考え込んでしまいます。それぞれに異なる根っこ。それぞれの生き方。山仕事で身体を疲れさせても夜中に目が覚めてしまい、いよいよリズムを取り戻さないと身が持ちません。山登りをして一度リセットしたいと思いました。思考を健全に保つには花鳥風月が必要です。
山行前夜、21時前に就寝で目が覚めたのは0時半。弁当を作り、2時に再度布団に入って6時起床。結局登山口に着いたのは10時過ぎ。無理をせず途中で引き返す前提で登り始めました。
ゴーヤと生姜は塩揉みして搾ってから少量の梅酢と醤油で風味付け。インゲンはソーセージと一緒に茹でて粒マスタードで和えておけば即席のピクルスに。定番の卵焼きは今回砂糖を使わず、卵6個に対して味醂と醤油を合わせたものを100cc。しっとり甘くて山弁当に最高に合いました。
山の静寂には毎度、新鮮な感動を覚えます。ここに来なければ得られなかった静寂。遠くに三嶺が天狗塚が見えます。
刻一刻と変化してゆく陽光。辺りにキツツキの音が響きます。遠くで鹿の鳴き声がします。暮れ行く緊張感が嫌いではない私。長居したいのを堪えて4時に下山。
雨風食堂さんへ納品してきました
山仕事がはじまりました
秋も深まり、ストーブに火を入れると薪の消費が加速します。
我が家では風呂を薪で沸かすので年中薪暮らし。外出していて帰りが遅くなった日など、シャワーで済ますこともありますが、あまりサボっていると、虫が増えたり家が湿気ってカビが生えたり、冬は寒すぎてシャワーを浴びるにも気合がいるという切実さもあって、多分350日は焚いてます。なので、山仕事は欠かせません。
腰の具合は信じられないほど良くなりました。臀部のひきつりもほとんど無くなり、もはや腰痛持ちであることを忘れるくらいです。かつてに比べれば疲れやすくなりましたが、それについては、身体の感度が良くなったと前向きに捉えていいそうで、思い返せば、自分で言うのもなんですが、ねじ伏せるが如く酷使してきたと思います。今では毎日入念にストレッチをすることで下手な力みも取れて呼吸がしやすくなり、かえって調子が上がってきたくらい。
枝を払って片付けるのも、玉切りした丸太を運び出すのも、久しぶりにやればハードな仕事ですが、この暮らしが自分達の軸なので、心身が充足します。