山仕事備忘録〜裏山’17その1〜

IMG_4162

年明けより、温海かぶの収穫と仕込みを進めています。

仕込みばかりだと体が冷えきって腰痛が出たり、運動不足で寝れなくなったりするので、合間に裏山の手入れをしています。当初、植林や竹薮は家やお墓に覆い被さるように迫っていて、誤って倒せば直撃する難しい状況でしたが、6年かけて、そういった危険個所は何事もなく無事に、ではありませんでしたが、順次済ませてきました。

今年はその最後に残っていた家の北西に当たる裏山。土地を離れた家のお稲荷様が残っており、手入れがされず薮となっていました。竹が浸食し、腐れの入った大径木が多く見られ、何時何時こちらに倒れて来るかもしれず、既に直径50センチを超える木々がこのまま更に何十年と放置された将来の事を考えると、色々大事になることも考えられます。近い将来伐るにせよ、祠や榊、田などがあって倒す方向は限られており、こちらが管理する山方向にするならば伐り開いた今でないとこちらも困ります。

言葉足らずではありましたが、了解を得て伐らせてもらうことにしました。倒す方向には地滑り調査のポールやボーリングの穴、そして、残しておきたい楓や樫、椿、椎などの雑木があり、それらを避けるようにしなければならないので、難しいことにかわりはありません。手引書を読みながらの独学、要所は一本一本ロープをかけ、滑車に通してウインチで引っ張り、楔を打って倒します。

IMG_4157

まず、侵食していた竹を伐って作業性に問題のないところに積むところから始めました。竹は嵩張り滑りやすく、枝で目を突きやすいので、考えなしに扱うと事故の原因になります。できるだけ長いままをロープで引っ張って運び、立ち木(竹)に挟まるように固定し、その上で作業ができるくらいがっちりと隙間なく積んでいきます。薮の中、枝が四方八方に乱れ、つるに絡まれた檜はロープで引っ張っても中々倒れてくれず難儀しました。収穫されず放置された柚子の木も葛とバラに呑まれ、たった2本でしたが不用意に扱えば足を貫通するような刺が危なっかしく、本来なら頼まれてもやりたくないような仕事でした。

ボーリングの周りには鉄のフレームが溶接されていて、際に生えている木(上写真の手前2本)を倒す時、楔を打つ斧が振れないので竹や細い木を積んで足場を作り、高い位置で伐り倒しました。最終的に一本、どうしても上に掛かる方向にしか倒せない木(下写真の中央)の場合は、その前にフレームに沿って数本倒して枕にし、その上に倒れるようにしました。

慣れてきた時が危ないと思いますが、基本となる受け口と追い口、そして木の重心を見極める精度を上げていくためには、ロープとウインチに頼りすぎると分からないままなので、今回、いけると思う木はできるだけ楔だけで倒すようにしました。

IMG_4168

一年、枝葉をつけたまま乾かし、順次、玉切りして割ります。それらの作業性と量を考えると、今期は終了です。

これまでやってきて危なかった事を考え合わせると、事故を起こす危険度が高いのは木が倒れるときよりもむしろ、その後の作業においての方だと感じています。急傾斜地で玉切りにする際に丸太が転がり落ちたり滑り落ちたりする危険。向きを考えず乱雑に倒してしまうとかさ高くなり、不安定な高所作業をせざるを得なくなったり、予想外の力が瞬間に跳ね上がったり。どこでどのような力が働きその状態になっているか把握できていないと、思わぬ事故に遭いかねません。谷に橋を架けるようには倒さないようにし、向きを出来るだけ揃え、下手な力がかかってるところはその都度、片を付けて安定を確保します。試行錯誤しながらなので、ひとりマイペースで進めています。

 

 

ある晴れの日

img_4107

妹が久しぶりに麦山へ遊びに来てくれました。

いく農園のイラストは彼女が描いたもので、嫁がデザインに落とし込んでいます。6歳年が離れているので、私が実家を出たときにはまだ小学校を卒業したばかりでしたが、いつの間にか社会人となり、もう三十路。遠く離れた土地で彼女の人生を歩んでいます。

人はそれぞれに背負うものがあり、課せられた制約の中で生きていると言えるのではないでしょうか。制約という言葉を改めて辞書で調べてみると、「物事の実現・成立に欠くことの出来ない条件」という思ってもみなかった語義がはじめにありました。先ず思い浮かぶであろう「妨げ」や「足かせ」のような意味の、「ある条件をつけて自由な・活動(成立)を妨げること」はその後。なるほど、考えてみれば自分にとっては辛いことでしかなかった症状・体質も、困った性格も、今の暮らしと仕事に至る原動力となってきました。それがなければ、健康を切望することもなかったでしょうし、性質を直すのではなく活かせる、自分なりの仕事を探し求める必要もなかったでしょう。そして、続けるためには、揺らぎようのない明確な理由が必要だということも日々感じています。人にとって、重く足かせのようにしか感じられないことが、実は自己実現のために欠くことのできない条件だということを先人は教えてくれているのかもしれません。

妹と次に会えるのはいつになるかわかりませんが、また楽しい食事をともに出来たらそれでいいと思います。

 

img_4097

「いろんなことがあるけれど、私は元気です。」

 

 

 

四国の食卓 2016,11,19/20

二日間のイベントを終え、麦山に帰ってきました。

まなべ商店のくみちゃんをはじめ、イベントを企画運営して下さった皆さん、出店者の皆さん、そして、お立ち寄り下さり、イベントを盛り上げて下さった皆様、ありがとうございました。ご当地、松山のラクダピクニックさんで既に見知って下さっているお客様もいて、慣れない街でとても心強かったです。

初日は搬入の際に車のバッテリーが上がってしまうハプニングがありました。5年目で交換時期に来ていたところ、ハザードランプを数十分間点滅させていたことが原因でした。本日、新品に交換してきました。どうもお騒がせしました。

さて、今回の企画は「四国の食卓〜日本酒とともに〜」でした。稲刈りが終わり、酒仕込みのはじりを祝う意味でも、冷やした吟醸酒を屋外でしっぽり楽しむ上で気候的に過ごしやすいという意味でも、この時期はベストタイミングだったと感じました。

海産の干物、薫製もの、根菜たっぷりの猪汁、煮込み。そこに「漬け物」ではなく「ピクルス」とくれば少なからず違和感を感じられるかも知れないと、こちらに不安がありましたが、意外とお客様はすんなり受け入れて下さったようでした。打ち合わせの際、お酒とどんなピクルスが合うかを改めて確認しました。お酒もいろいろ、従来の普通酒もあれば、ベタベタせず繊細で香り豊かな吟醸酒もあります。柑橘系のフルーティーな香りのスッキリ抜けるようなお酒には、新生姜のローズスイートがとても合いました。ローズスイートのレシピは生姜のキレのある辛さが生きるよう、スッキリした甘みにする為にグラニュー糖を使い、生姜がより華やかに香るようにローズフラワーと合わせたもので、蕗のピクルスもまた、華やかな吟醸酒、フルーティーなクラフトビール、マスカットと白ワインをイメージして作ったものです。

ナスのレリッシュは干物や燻製に添えて、にんにく蕾のレリッシュは素材そのものに旨みがあるので、しっかり飲み応えのあるお酒と塩辛のようにちびちび食べてもらえると思います。にんにく蕾はクミンと合うのですが、それでレシピを組んでしまうと日本酒に合わなくなるので加えるのをやめた経緯があります。今回の打ち合わせでは、豆腐に少し、そこにのびるの小口切りを散らしました。すると、ああ〜日本に生まれてよかったという美味しさに変わったのです。お酒がより美味しくなり、豆腐の頼もしさに感心、レリッシュの活躍、のびるってこんなに美味しかったのかと感動するとても楽しい食卓でした。

手探りでピクルスを作り始めた頃から少しずつ今のような方向性に向かったのは、学生時代の親友が酒造りをしていることが一番大きいと思います。季節の便りに送ってくれるお酒は、それまであまりおいしいと思ったことがなかった日本酒のイメージを変えてくれました。その年の作付けがひと段落して収穫を祝うとき、酷使した身体を癒すように染み渡りました。まるで米から生まれた命の水。お酒はわたしたち日本の文化なんだと誇らしい気持ちになったのです。

img_4085

img_4069

img_4066

img_4068

まるふく農園夫妻と三津浜の田中戸さん

img_4083

今回のイベントを取りまとめた、まなべ商店のくみちゃんと株式会社エス・ピー・シーの松下さん

img_4082

四国四県の飲み比べセットがかなり魅力的でした。

img_4074

img_4072

ヒビヤレコードさんが穂紫蘇のピクルスと黄色ズッキーニのピクルスを使ったお酒のアテを作って下さいました。

その他、イベントの雰囲気が分かる画像はこちらをどうぞ。

 

イベントのお知らせ

2016-11ael_1

2016-11ael_2

今週末、11月19日、20日の両日、まなべ商店さんのイベントに出店します。

場所は松山にある商業施設「アエル松山」です。

まなべ商店のくみちゃんがセレクトした商品や、その縁で集まった人たちのお料理と四国の地酒が楽しめます。いく農園のピクルスもお料理に使って頂く予定です。

イベントページはこちら

 

家のこと〜その1〜

img_4032

植林と竹薮で鬱蒼としていた裏山が大分明るくなってきました。小さい頃に住んでいた街は欅並木がきれいでドングリや落ち葉が敷き詰まる森のような公園がありました。それが原風景にあるので、裏山に欅が見つかったときは特に嬉しくなりました。楠もまた思い入れのある木なんです。

家の周りの環境を整えることは家を維持するためにも欠かすことのできない仕事です。しかし、これまで山に呑まれ雨漏りしていたこの家は、屋根を葺き替えてはあったものの、痛みはすでに隅々まで進行していたようです。夜静まった頃、カサカサ物音がするので何かと思えば、障子戸の敷居がシロアリに食われている音でした。指で押せば穴があくほどになり、簡単に剥げるので剥いでいくと、芯までスカスカ。日を改め、大工さんに床下を見てもらったところ、土台が大方やられており、差し替えて修復できるレベルではないことがわかりました。もちろん、消毒が効くことも期待できません。

傷んだところを補修しつつ住んでいけたらと考えて、これまで自分たちなりの精一杯のお金をかけ、友達の大工さんの厚意に甘えてきましたが、もはや、いずれ建て替えることに腹を決めざるをえなくなったのです。家主さんともいずれ話し合いをしなければなりません。

せめてあと10年、15年、もってくれたらいいのですが。

img_3981

img_3992

(その2につづく)

畑のようす~11月上旬

 

img_3998

今年の人参ははウサギにもやられず、わさわさ茂っています。

img_4006

生姜は霜除けのために不織布をはりました。こうしておけば12月の中旬までは畑で元気にいてくれますので、収穫したての瑞々しい生姜を順次仕込むことができます。

img_4009 img_4008 img_4018

ニンニクはたっぷり敷き草をしました。

img_4020

新聞掲載のお知らせ

2016-10-5nosai

10月5日発行の農業共済新聞に寄稿させていただきました。

「就農後、現在の農業形態に対する考えや展望」「今後の目標」「農業の魅力」「日本の農業について思うこと」「非農家出身が農へ参入する事への課題」など、題材を頂いたことで、はじめて書けることもありました。

タイトルは担当の記者さんが、原稿を踏まえて付けてくださいました。