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山仕事備忘録〜田の東その3〜

道上の崖に生えた支障木を伐ります。この並びの3本目。「伐り落とし」で道に落ちないようにします。前日に枝を打ちましたが、隣の栗の木(楢の木かも)が樹幹に干渉し、いじけたところから梢が複数出ており、吊るして処理するのに手間がかかりました。2時間ほど樹上にいて、その日はすでに4本登っていたこともあって集中力も体力もいよいよ限界、メインロープをそのままに、日を改めることにしました。そして2日目。

ひとまず胴綱だけでのぼる。

垂直に垂れたメインロープと比べると、かなり谷側に傾いていることがわかる。重心側に身を置いた方が安定するが、登るだけならなんとかなる。ただ、胴綱が多少ずれ下がる。

谷側に回り込こむ時、体が振れるのでスリングでバックアップを取る。残しておいたメインロープに接続。

 細く歪で樹高も意外と高く、木々を突き抜け20メートル近くある。それでも、今回のケースは、登らず伐り倒す方が予測不可能なことが多く大掛かりになり、かえって危険と判断。

崖から舗装路の上に張り出していること。また、樹幹の中ほど、栗の枝が癒着したようになっているところが半分ほど欠損しており、叩いてみても正直なところ判然とせず、終始、不安を抱えことになりました。栗の方には蟻が入っているようで、表面に木屑がびっしり。それでも梢端部を安全に伐り落とすにはできる限り登り詰めなければならない。足元の直径は10センチほど。土踏まずあたりに装着した一本爪スパイクのその一点一点に集中して足を運び、正しい角度と体重で確実に効かせる。ザクザク勢いをつけて刺し込むようなことはしません。

 トップカットの前に胴綱を幹に一回りさせる。通常のU字吊りでは、樹上を移動しやすい反面、思わぬ衝撃や揺れで足を滑らせた場合、それ単体で落下を止めることを期待はできない。(運よく、枝の切り残し部分に引っかかってくれたら助かるかもしれないが、といって、あれもこれもと切り残せば足場が悪くなり、ともすれば靴に当たるそれが釘抜の支点のようになってスパイクの爪が抜けてしまうこともある。また、メインロープに体を預けた時には張り詰めたロープに干渉してしまう。)なので、その場に身体を据えて作業する上では、荷重によって胴綱が締まり固定できるその括りの方がいい。支障のない限り、伐り下げていく際もそのようにする。

チェーンソーで受け口をいれ、鋸で調整。共吊り(登る木自体に吊るす方法)だと衝撃と揺れが大きくなるので、今回は隣の栗の枝に吊りました。手持ちのスリングは1.2メートル。(今回はもう少し長いものの方が良かった)

切り離す梢端部の直径は8センチ、長さは4メートル。それ以上だと重量がありすぎて、いざという時は上方に細挽きをかけて引っ張るにしてもコントロールできないように思う。

鋸を入れるだけでかなり揺れます。普通のまともな木ならさほど気にならなくても、今回はいちいち不安になります。揺れを増幅させないようにタイミングをずらしゆっくり切り込みます。

 風を受けて反対に傾くことなく、重心に従い素直に倒れてゆく。

梢は下から見上げるよりも数倍嵩高く、量感がある。とにかく生きて水を吸い上げている木は重い。しっかり乾いた製材と比べれば、棒寒天とところてんのぐらいの違いといえば言い過ぎかもしれないが、それくらいに違う。

栗の枝に掛かって手元まで引き寄せることができないので、その枝もまた吊るして切ることに。

手鋸で切り離す。

スリングを予備していたのでことなきを得ました。

 メインロープを伝って下降し、梢を持てるくらいに切り分け、安全なところに落とす。

スリングにぶら下がった末端、これくらいにしてはじめて括りを取ることができる。

 「伐り落とし」といっても誤って落とさないように、最後は鋸で仕上げ持ち支える。そして然るべきところに落とす。チェーンソーは重さ6キロ、刃渡40センチ。(今のところ、樹上作業から直径80センチそこそこの大径木の伐倒まで、全てをこの一台で賄っている。)細く足場の限られた樹上ではスターターコードをひくにも、体側に取り付けたツールホルダーにストラップを掛けて仕舞うまでの一連の動作にも、身体への負荷は容易ではない。なので、1回でエンジンがかからなくても次ではかかるようにしておきたい。エアフィルターの掃除も毎回しておく。また、誤ってロープ類を切ってしまわないよいうに、チェーンのテンションを張り気味にして、スロットルを離せばすぐに回転が止まるよう調整しておく。とにかく、自分の思うように操作出来る状態でなければ樹上ではとても扱えない。キックバックしにくい目立ては絶対条件であった。

 持てるサイズに切っては落とす。これを何度も繰り返し、高度を下げてゆく。

二日目もたっぷり2時間ほどかかってようやく半分まで降りてきました。脛(すね)の内側や腰を圧迫する装具、膝に掛かる無理な荷重、体幹を常に緊張させる姿勢、といった身体を痛める過酷な労働ですが、ここで暮らす自分のためにやっています。

翌日、欠損部をあらためました。

伐り落としたものを順に並べてみます。幹の中ほどとその少し上の2箇所。

身体を預けたのは手にしている短辺側だったので、掛かる負荷を考えると、生きている外輪部の強度を担保する方向としては正解だったかなと思います。とはいえ、自分で受け口と追い口を入れて木を倒すことを考えれば、少くとも直径の三分の一もツルが残っている場合、そうそう引き倒せるものではないし、一気に折れることも、まずありません。

 

 

 

山仕事備忘録〜田の東その2〜

だいぶんスッキリしてきました。木の下にいても安全なように、太い枯れ枝を残さず、打った枝が引っかかったまま、いつ落ちてくるともしれない状態がないようにしてあります。そうしておけば、今後、必要に応じて無理せず一本ずつ片付けることができます。

本日出荷の生鮮

 我が家に三毛猫の「ミケ」がやってきました。多分チー坊の姪っ子のような感じ。なかなかのお転婆です。前足の先がないですが元気いっぱい、ネズミも狩るし鳥にも果敢に挑んでいます。

チー坊もまた先日誰かの仕掛けたトラバサミに前足を捕られてしまい、ある夜その罠を引きずり引きずり、這々の体で帰ってきました。すぐに取り外してあげましたが、ぺったんこに潰れてしまったその小さな手。ミケのそれと同じように壊死してしまうかと思われましたが、脅威的な回復力で治ったようです。しかし、逃げだす時に括りを必死に噛み切ったのでしょう、歯を痛めてしまい、それはなかなか治り難く一気に老け込んでしまいました。それにしてもこの時期の縄張り争いは何かに取り憑かれたよう。バンバンに腫れ上がった脚をひきづってでも毎晩出掛けるチー坊には脱帽でした。

山仕事備忘録〜田の東〜

来春から始める米作り。その前にまずやらなければならないことが、日当たりの確保と車を乗り入れられるようにすることです。

この一帯は主たる畑から少し離れたところにあり、田の他に梅や柚子の畑、それから少しの植林があります。車を横付けすることもままならず、とても不便でした。杉や檜の枝は伸び放題で下の梅も枯れていく状態。田を始めるあたって、しっかり手入れをすることにしました。

まず、車が乗り入れられるよう、邪魔になっていた柚子の木を4株伐採し、1箇所に山積みにしました。勿体無くてこれまで思い切れませんでしたが、持て余していたこともあり、田をやるということでようやく前に進めます。なお、柚子の木はまだ2株立派なものがあるので、我が家はそれで十分。

次に、植林を伐るため、まずは枝打ちから。ここは倒しておける場所がほとんどないので、樹上から伐り落とす予定。なので、ひとまず、梢端部を残し枝を切り落としていきます。落とした枝は株元に積み上げ、玉切りしたものを上から落としても大丈夫なよう整えます。ギチギチに立て込み幾重にも絡み合った枝々。いずれにしても、樹上作業ができなければ倒しようのない現場でした。ツル絡みもなかなかです。

  スパイクの爪を効かせるには、幹に対して30°から45°の角度が取れるよう体を離す。丁度、腰から下と肘から指先までが2:1なので、「小さく前へ倣え」の姿勢をとって指先が幹に触れるくらいにすれば、内角は30°になる。なお、胴綱を腰の水平ラインより下げることはしない。考えてみれば、体重は胴綱を介して円の接線方向にかかるのだから、身体の垂直方向に(胴綱を)かければ、爪は体重方向に効くことになり最も安定する。

この日初めて樹上でチェーンソーを使い、枝打ちと低い木でトップカットから伐り落とまでしたところ、色々改善点が見えてきました。

安全の確保は体力と集中力次第。セットと解除を繰り返すバックアップシステムは完全ではないし、うっかり刃を当ててしまうとロープは簡単に切れてしまう。昇り降りするタイミングではどうしても爪の当たり角が浅くなりがちで滑ることがままある。時間をかけすぎないということもまた安全のための大事な要素なので、いかに手数を減らすか。

枝を打つことでようやく全体像が見えてきます。落とした枝の片付けもなかなかの重労働。腰と相談しながら進めます。

本年もありがとうございました。

暮れは年内に済ませて欲しいと言われてるところの草刈り。4日間で12時間。流石に疲れましたが、日頃お世話になっている御礼という気持ちでやらせてもらっています。29日に仕事納めをして、30日は久しぶりに障子の張り替え。大晦日は休みつつ、煮しめやスモークチキンを作り、正月の準備です。

嫁が、裏山やこの度手入れした山から色々集めてきてリースを作ってくれました。檜やスギの枝もこうして見ると綺麗です。

山仕事備忘録〜三叉路脇の支障木その5〜

いよいよ大詰め、二日目は直径60センチ前後の2本です。1本目は重心が前方、伐倒方向にあるので意図せず倒れ出してしまわないように、2本目は重心が後方にあるため、起こす際にツルが引き抜けないよう気をつけます。いずれにしても方向を定めたならばツルの強度を最後まで確保すること。

これまで、いわゆる大径木については基本的に「芯切り」をしてきました。引き抜けや割れを避けるため、受け口を作った後、その真ん中から切り込んで芯を断ち、ひとつの蝶番であったツルを両側に分ける「芯切り」。その分、切り残してある部分(つまり「ツル」)による抵抗が減るため、楔を打ち込みやすくなります。そういうこともあって、圧倒的重量のある木を起こす場合は積極的に行ってきました。しかし、より厳しく失敗が許されない状況にあって迷いが生まれてきたのです。果たして、その切り方が今回プラスに働くのかマイナスに働くのか。ツルの強度において、芯を切ってより厚く残す方が強いのか、薄くても切らない方が強いのか。

前日の3本目は直径40センチで比較的小柄な木でしたが、芯切りをしない状態でかなりの傾きまでツルが効き、制動力も十分でした。芯は外輪部より強く、逆にそれが仇になって抜けや割れにつながるわけですが、適切なツル幅を見極めることができれば、多少の抜けはあっても、芯を残した方がより制動力を確保できるのではないか。再検証した結果、今回は芯切りをしないことにしました。なお、重心が前方に偏っているとしても、枝打ちによって上方を軽くしてあるので、いきなり割れて(裂け上がって)倒れることはないでしょう。

左側1本目が前方に傾き(追いヅル切りをするほどではないと判断)、右側2本目は後方に傾いている。

樹高が30メートルほどあり重量級ではあるけれど、受け口正面に素直に倒れてくれさえすれば、ケーブルにも路肩にも接触しない。間違いないと思えるところまで傾けた後、最後に楔を打つ。ゆっくり倒れ始める。

 最後の1本。前方の切り株に樹幹が当たって元口が跳ね上がらないよう、高い位置に受け口を作り、梢から着地させる。

 谷側の追い口を入れるところまでは樹上作業。不安定な梯子に足をかけてやるよりも安全。

 重心を後方から前方へ起こすまでが、ツルにかかる負荷の最も大きいところ。ひとまず受け口と並行に追い口を入れてゆく。おおよそ直径の20%ツルを残していれば絶対に大丈夫というものでもないから、楔を打ち込む感触や音を確認しつつ切り進めてゆく。斧目を入れ、裂け具合を確認するために樹皮を剥く。この木は樹幹の途中から股になって広がっており、その分余計にツルへ負荷がかかる。

山側の楔の方が入りやすくツルが先に裂け始めました。重心は谷側にあるということ。なので、山側のツルが谷側より薄くならないよう注意し、真ん中と谷側の楔を重点的に打ち、山側のツルを守ります。最適なツル幅を見極めるため、追い口を少し入れては打ち込み、裂け目を確認し、下にだけ入るまで間を詰めていきます。今回のようなシビアなケースでは切り過ぎることがないよう途中からは伐採鋸を使います。直径60センチくらいまでなら反対側まで刃が届くので重宝しています。楔が入りやすく変わったなら、それ以上追い口を入れることはしません。方向に間違いがないか、ツルに異常はないか確認。最後の一打を加えます。

切り株に「抜け」の後が結構強く残っている。正確に倒すことを最優先する場合、重心が後方谷側にあった今回はむしろそれぐらいツルを厚く残し、強度を持たせることが要だった。

これで全て無事に倒れました。誤差なくまとまったことで後はマイペースに片付けていけます。翌日は整体。

この道の先にはこれからはじめる私たちの田があります。放棄地だったところ、この17年手入れだけは続けてきました。しかし、混沌として好きになれない道というのはどうしても足が向かないもの。日々行き来するため、明るくしたかったのです。幸い、地権者にも伐ってもらえると助かると言っていただけました。いつかはと思っていたことがついに叶い、嫁と祝杯をあげました。

 

山仕事備忘録〜三叉路脇の支障木その4〜

2年に渡たった現場の後半になります。昨シーズンは周囲の藪の片付けから枝打ちを9日かけて行いました。

二つの道に挟まれた、路肩をのぞけば幅わずか5メートル足らずの狭地。そこに樹高20メートルから30メートル、直径40センチから60センチ前後の杉5本をまとめます。枝ぶりを考えれば、樹幹は幅2メートル以内に収めなければならず、後の安全を考えれば、乱雑に重ねず隣り合わせて寝かせなければならない。

重機があれば、多少の誤差も力技でリカバーできるだろうけれど、そうでないなら、より厳密さが求められる。つまり、圧倒的重量をもつ木を伐るという行為は、本来、失敗するかもしれない一発勝負や、場当たり的な楽観でやることではなく、理論的に且つひとつひとつ反応を確認した上で駒を進める行為でなければならない。

その確実性をより高めるには、(地上での)伐倒技術を補完するためにも、事前の樹上作業が必須となる。枝絡みやツル絡み、今回の通信ケーブルのような構造物との接触といった、阻害要因を未然に取り除き、木の全容をはっきりさせる。重心の偏りを可能な限り補正し伐倒方向から逸れる要因を減らす、また、上方を軽くすることで、伐倒の際に狙い通りであるか明確になる角度まで傾けられるようにし、誤差があるなら調整し、いよいよ万全であるとなってからの最後の一手を見極められるようにする。

いつか伐りたいとは思いつつ、いざ伐ろうとなれなかったこの現場について、終始、運任せではないところに至って初めて一歩踏み出せたというのは、つまりそういうことなのだと思います。とは言うものの、今でも出来ると思って伐るわけではありません。それほど、伐るとなって見上げる木は圧倒的存在感を持って我が身に迫ってくるのです。

周囲の藪を片づけ枝を打った昨シーズンから一年寝かせるその間、春一回、夏一回そして秋にもう一回草刈りし、つまづいたり引っかかったりしそうな飛び出した枝を払い、邪魔になる株元を切り戻しました。濃い藪でしたが、灌木や蔓(かずら)もバラも十分朽ちて嵩も減り、滑りやすい竹の足場も随分マシになりました。

 はじめの2本は枝絡みに備えて牽引具をセットする。あくまで念の為。基本的には楔で倒す。

いよいよ伐る段となればコーンと車で道を止め、嫁にも立ってもらいます。

急斜面なので谷側に立つと追い口が顔の高さに。

2本目も同様に牽引具をセットする。

 最後の一手を見極めることができれば余裕を持って退避できる。

 アンカーにした樫、その右にある欅をゲートに見立て、その間に収めていく。その幅が2メートル弱。一本目は若干谷に寄ってしまったけれど、欅が受け止めそこに収めてくれた。

本日の3本目、道脇のこれだけはゲートの外。内側に入れてしまうと角度的に梢が隣地(クヌギ林)に出てしまう。また、この木は道側(ケーブル側)に傾いており、株元から見上げれば、上方は約1メートル路肩側(山側)にある。なので、受け口正面を定めるときはその分谷側に設定する。でなければ、ケーブルに接触しないまでも、樹幹が路肩に当たってしまう。

3本とも上手く収まり、1日目はこれにて終了。明日に備えます。

 

帰省

秋深まり、いよいよ畑仕事やピクルスの仕込みも佳境を迎えます。春からの疲れがいよいよ積もり積もって、ここ数年、この時期に寝込むことが増えてきました。昨年はギックリ腰でしたが今年は腰痛に加えて風邪。数日寝込み、その後もなかなか全快せず、騙し騙し進めるものの三週間満足に仕事ができない、となればいよいよやるべきことが詰まってきて、夜寝つけなくなるという悪循環。冬越し野菜には草をかぶせてあげなければならず、収穫適期も迫ります。今後、この時期の帰省は難しそうです。

明石海峡大橋を渡る。

 

秋の山行〜雨に降られた石鎚裏参道〜

先月の下旬に予定していた山行でしたが、仕事や体調など鑑みて延期することにしました。天気はこのところ変動しており、週間予報もコロコロ変わりますが、前日予報では11月2日からの三日間、晴れ間はあって雨は降らないだろうという感じ。しかし、当日になれば朝から一向に晴れず道中、パラパラ小雨も降る始末。無理となればいつでも引き返すつもりで向かいましたが、面河へ着く頃にはようやく晴れ間が見え始めました。

渓谷の紅葉はもう少し先でしょうか。かつての賑わいを思わせる国定公園の中、登山口へと歩を進めます。鳥居をくぐれば石段の急登。二日前にしっかり降った雨で足元が滑りやすいですが、ストックを使うことで一歩一歩に集中し、足への負担も軽減できるので安心です。高度を上げるにつれて葉が色付いてきました。木漏れ日に和みます。稜線に近づくにつれ風が強まり、遠くに見える石鎚の頂も二ノ森も濃いガスが覆っています。きっと強風吹き荒んでいることでしょう。

ひとまず、お弁当休憩にします。おかずはいつもの卵焼きに鶏の燻製、山東菜とニラの炒め物(にんにくレリッシュと醤油で味付け)、そして自家製紅生姜。

テント場までは所々の木道(急斜面のザレ場を通れるよう整備された道)が滑りやすく多少難儀したものの、予定よりさほどかからず16時過ぎに到着。夜の帳が下りる前に張り終えました。ところが、中に入って落ち着く間もなく、雨。

嫌な予感はしていたものの、さて、困った。フライシート(テントを覆う雨除け)のシーリングが劣化したままだったのです。つまり、このままでは絶対雨漏りするということ。

あれよあれよという間に雨足が強くなってきました。銀マットを本体との間に差し込めれば、側面はともかくも、頭上からポタポタ落ちてくることだけは防げるはず。しかし、なかなか上手く差し込めず、もたつくほど、フライシートを伝う水で余計に濡れてしまいます。山では濡れないことが鉄則なのに、あろうことか、夜を過ごす頼みの保温着がびしょびしょ。当然だけど、火にあたって衣類を乾かすことはできない。なぜ、それらを脱いで、仕舞って、雨具を着てからにしなかったのか、自分。

(登山口の看板)

どうにかこうにか、銀マットだけは雑にならないよう被せました。暫時、靴をビニル袋に包んで濡れないようにしないと。「冷えた身体」「ぐずぐずに濡れた登山靴」想像するだけでゾッとします。

さて、どうしよう。雲行きがわからない状況で濡れたものを脱いで寝袋に包まることが果たして正解なのか。そもそも、寝袋自体がへたって頼りなく、それだけでは過ごせそうにありません。ともかく、まだ濡れていない嫁にはシュラフに潜っていてもらいます。最悪、ひと組だけでも乾いたシュラフを切り札として残しておきたい。ただ、一旦体が冷え切ってしまうと、熱源もなく果たして回復できるのかどうか。

濡れた保温着(化繊の中綿が封入された、いわゆるインサレーション)を着た状態でも温く感じているのでその上からレインジャケット、そしてレインパンツを着ることにしました。そしてウールの厚手の靴下、さらにソックスカバー(薄手のフリース地に爪先から踵まで合成皮革で補強されたもの)を履いて、空にしたザックに腰まで突っ込みました。まず落ち着かないと。

足元は冷えるものの、上半身は当分なんとか行けそうです。雨は断続的に降り続いてはいるものの、嵐というほどではなく、側面から染み出てくる水滴については、時々スポンジ(佐官用の吸水スポンジを今回初めて試したところ、とても効果的)で吸い取ってなんとか越せそうです。しばらくしてウトウトして来ました。少し濡れていた靴下は若干乾いたようですが、下半身の冷えは取れません。嫁が「寝袋に入らないの?」と心配してくれます。20時ごろ、何か食べながら次どうするか改めて考えることにしました。胡桃パンとチーズが美味しい。火を使えないこういう時、パンのようにすぐ食べられるものがとても助かります。おにぎりは冷たくて一個食べればもう十分。雨は時折パラパラ降る程度。翌日は持ち直すはずなので、これ以上荒れるよりも回復する筈なのですが、、、。今後の予定としては、翌日、二ノ森方面に向かってもう一泊するのは諦め、下山することにしました。

それにしても、驚いたのは、びしょ濡れだったインサレーションがはっきり乾き始めていたことです。上に着込んでいたレインジャケットによる蓄熱効果もあったと思うのですが、体温によって乾いたということ。それは、例えば僅かな火で湿った木を焚く時、無闇に息を吹きかけて火力を消耗させるのではなく、まずは燻らせながらもエネルギーを温存し乾くのを待つ方が確実に熾せるということと同じかもしれません。これならば寝袋に入っても中を濡らすことはないだろうし、シュラフカバーに期待していいのでは。テント内の気温は10℃前後で思ったより温く、外気温はおそらく3℃前後、辺りが凍ることもなく助かりました。嫁が用意してくれたホッカイロのおかげもあって冷えも治り、温くして眠ることができました。

 そして、朝を迎えました。悪寒もなく元気です。靴下もインサレーションもすっかり乾いていました。改めてその性能に感動です。さて、コーヒーを淹れて無事を祝いましょう。毎度嫁お手製のパウンドケーキは今回イチジク入り。数年前に一本だけですが植えて昨年あたりから穫れはじめた和種です。収穫後セミドライにしてラム酒漬けにしておいたもの。しっとり香り高く贅沢な美味しさでした。

朝食はカップスープとパン。残り物のおにぎりは雑炊にしました。

下山はゆっくり景色を楽しみながら、また腰の具合が心配だったのでストレッチの時間も十分摂りました。午前の穏やかな光の中、紅葉が美しく気持ちも綻びます。 さて今後、テントの雨仕舞いをどうするか、フライシートを買い替えるべきなのか、修理に出せるのか、いずれにせよ加水分解するシーリングより自分でなんとかならないものか。

今回は雨で大変だったにもかかわらず、嫁曰く、

「これまでのテント泊で一番ぐっすり眠れた」

「こんなことがあっても次の山行が楽しみで仕方がない」とのこと。

よし、よし!少しずつ経験を積み更なる山へ想いを馳せる。良い趣味を得たものです。