これほど傾いた木を起こすのは初めてのこと。竹藪から顔を出す格好でした。斜面直下はコンクリートの法面そして柚子ばたけ。
「落葉樹は針葉樹のようにはいかない」とはよく聞きますが、こういったケースはまさにその意味するところを理解しているかが成否の分かれ目となりそうです。牽引によって捻れることを充分に想定しなければなりません。
前段階としてできるだけ枝を落とすことにしました。偏重を少しでも軽減するためです。上方に取り付けた滑車を介し牽引具で少しずつ地上に降ろすようにします。 セッティングの手順に課題が残ったが、しっかり吊れた
枝を降ろして片付けて、また登ってを繰り返す。そのまま降ろすと直下の木々に絡まってしまうので、部分的に枝を落としてバランスを変えたり引き上げ直したり。何事も一筋縄ではいかない。
二日目。谷側へ張り出した枝を全て片付けたらセットを外し(滑車を取り付けていたスリングは枝の股に噛み込んで取れなかったのでそのまま)、木を起こすためのセッティングに替える。
ワイヤーロープと牽引具の付属ワイヤーをクリップで繋ぎ、予め滑車に通してから登ったのですが、後から考えれば、そもそもクリップはアンカーポイントで使うべきでした。そこに気付いていれば、ロープ類はいずれもフリーの状態で登ことができたし、樹上でのセッティングはより安全に済んだでしょう。今回はそれで上手くいったけれど、取り付けるにもテンションが掛かって重く、ワイヤー類の取り回しにも余計な注意が必要でした。明確になったのは「牽引具やアンカーポイントのセットは樹上セッティングが終わってから」です。
受け口は水平に深く角度を広く取る。方向を確認し、再び牽引具のテンションをしっかり効かせる。重心は圧倒的に後方にあるので、十分にテンションをかけれていないと、追い口を入れる途中で刃を噛み込み、いきなり倒れるかもしれない。その可能性を一つでもなくすため、木の股に滑車を取り付けて作用点がずれないようにはしてあるけれど、ツルが機能しない場合、横方向に倒れてしまうことを防ぐことはできない。
以前読んだ本の中に「追い口を幹に対して直角に入れる」という記述があって、それが基本原則なのかどういうことなのかわからず気になっていたのですが、今回こそ、それが適用される場面だと思いました。今回は傾き曲がった木を牽引して起こします。ツルに加わる捻れの方向。受け口側を前方、追い口側を後方とすると、前方斜め下へ潰れる側と後方斜め上へ引きちぎられる側を思い浮かべれば、ツルに低い方と高い方ができるその追い口の入れ方はとても理にかなっています。終盤、元口が後方に滑り落ちないよう、特に引きちぎられる側には十分なつっかえが必要です。(ツルの高さはつっかえの深さとなる)
起き上がった後はそのまま引っ張る方向に倒れるのではなく、傾きと樹幹の曲がりに従って、若干回転しながら道に沿って倒れるというイメージ。
だいぶん起きてきました。牽引具にかかる力が徐々に軽くなってきます。気は抜けませんが、いよいよ大詰めです。
無事、思ったところに寝てくれました。この木が片付いたのは大きいです。いずれはと思い立ってから4、5年経ちました。歩くのに心地よい小道にしていきたいものです。