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いく農園では、作物は何をもって育つのか知りたいという思いから、よりシンプルにシンプルに、農薬・化学肥料にかぎらず有機肥料やミネラル資材も使わず、不耕起・無肥料栽培で野菜を育てています。畑仕事の源泉を辿り、 刈り草や落ち葉、剪定した枝や竹など、畑の維持管理の際に無理なく手に入る有機物をもとに土を作り、その限りある有機物を最大限に生かす、より持続可能な方法として、不耕起栽培を取り入れています。 畑はすべて露地。育苗には、有機JAS認証の苗土を使っています。

 

「不耕起・無肥料栽培について」

不耕起栽培の「不耕起(ふこうき)」とは、あくまで人為的に耕さないという意味です。

畝の中には根が張り巡らされ、生き物によって形作られた空間や幾筋もの道が通っています。その物理構造は年を重ねる毎により深部まで、より複雑に行き渡り、畝はふかふかに、且つ弾力のあるベッドとなりま す。

木々に覆われた山のように、草が生え、根にしっかり支えられた畝は、大雨にも強く、土が流されることを極力抑えることができ、日照りつづきにも強くなります。人為的に耕さないのはその物理構造と生態系を壊さないためです。

IMG_1867 (不耕起8年目になる畝の断面)

「無肥料」とは肥料分が無いという意味ではありません。肥料を使わないという意味です。

第一次産業であるはずの農業は今、原料を他から調達する製造業と同じように、肥料や飼料、種、各種資材についても自給率は低く、輸入に依存しています。その結果、2009年には国際的な化学肥料の価格高騰から有機肥料の需要が急に高まり、供給不足となりました。いく農園では当時使っていた堆肥も米ぬかさえも手に入れることができませんでした。慣行栽培に限らず有機栽培においても同様、現代農業の基本は、作物の生育に必要な要素を数値化し、土壌分析の結果をもとに過不足やバランスを肥料やミネラル資材を用いて調整します。理論上、刈草等の自給できる有機物で数値を満たすことはできず、肥料を買えなければ技術体系そのものが成り立ちません。

これが転機となり、作物は何をもって育つのか、その本質を見直すことにしました。複雑な産業構造から一歩引いて農家の独立性を確保するには、まず技術的に自立すること。肥料がなくても成り立つ栽培方法を確立できれば、小規模であることが強みとなり、貿易自由化や変動する為替レートの影響を極力受けずに済むはずだと改めて考えるようになりました。もちろん、自給にこだわりすぎれば、生産性は落ち、業として成り立たなくなります。あくまで、農業における慣例のひとつひとつを見直すことで開ける展望があるのではないか、そういうところから始めた栽培方法です。

肥料を土に混ぜ込む必要がなければ、その為のトラクター仕事(耕起)も必要なくなります。実のところ、当時は貯蓄もほとんど底を尽き、肥料を買うお金がなかったことも予断を許さなかったのですが、2009年より全て無肥料栽培に切り替えました。

 

「作物は何をもって育つのか」

畑仕事に於いて気をつけるべき要素は大きく分けて3つあります。「物理性」「生物性」そして「化学性」です。陽当たりや風通し、水はけを整え、昔からされて来たように刈草を基に土作りをする。土が肥えれば結果として作物は元気に育ち、いい実を付けます。根も呼吸するので、畝はふっくら空気を抱いて通気性のいい状態を保つように、また、特定の虫が異常発生することの無いよう、バランスのとれた多様な生態系が育まれるように心がける。「生物性」と「物理性」については五感で感じられるので、畑で何をすべきかは、経験的に判断できるようになる。そう思えます。

しかし、土壌の「化学性」は、目で見て感じることが難しくとらえどころがないにもかかわらず、同じ畑で今後も収穫し続けられるかという「農業の持続性」に深く関わるため、無視できない要素です。でもなぜ、そもそも作物が健全に育たない状態になるのか。歴史的に農業が営まれてきた土地ならばそれは、元来の土質がどうというよりも、毎年同じ作物ばかりを育てる連作や、畑一面それだけが生えている単一栽培、そして、土壌の化学性に極端な影響を与えるほどの資材や薬剤を入れ続けてきたからで、それは農家の誰もが知っています。

植物の根圏に集まる微生物は土壌の化学性に大きな影響を与え、それは作物の生長を左右します。連作すれば、微生物に限らずその畑に集まる生物相を単調にし、土壌の化学性は偏ります。なので、自分の中で仮説を立てました。「化学性については、植生が多様で、生物性、物理性が豊かになれば自ずと結果は出るもので、作物にとって重要なのはその量ではなくバランスである」と。たとえ、もしその仮説が間違っていたとしても、土地に対して取り返しのつかない事にはなりません。むしろ、適地適作の基本に戻り、それを見極めることができるのではないかと考えるに至りました。

草を基にした土作りと二年一作」

作物が元気に育つよう畑をの手入れをし、肥えた土を作るには大量の刈草が必要で、作付け面積は確保できる刈草の量で決まります。作付けする年毎にまずは畝に10cm以上敷き詰まるほど入れますし、生育途中も刈れるだけその都度補給します。中山間地にあるいく農園の耕地面積は約50a、刈り場を入れると管理面積は1ha以上になりますが、この割合では足りないこともあり、一年の作付け面積は20aほどになっています。一方、休ませている畑には草を存分に生やし、青々と茂るように年2回は刈るようにしています。

「草が生えていること」は多様な生態系を育むベースであり、よりたくさんの虫や微生物が集まり更なる食物連鎖へと繋がります。なので、無肥料栽培で、土づくりは草だけですというと、とてもベジタリアンな畑をイメージされるかもしれません。しかし、ひとりでに集まったたくさんの生き物もまたその畑の土に還えるので、動物性タンパク質もたっぷり含まれることになります。作物を育てる土、それに含まれる養分、ミネラルの多様性とバランスを担保するのは多様な植生だと考えていますので、作付けせずに休ませる一年をとても大事にしています。

「刈草を入れること」「草を生やすこと」、ともに土作り、畑作りにおいて注目すべきは、草そのものの成分にとどまらず、それを基に増殖する生き物の成分であり生態による作用です。

「作物はあくまで育てるもの」

作物は何をもって育つのか、土壌分析に基づく肥培管理をしなかった頃の農家が無知だったのかというとそうではないはずです。

畑は有機物が分解される時に結果として耕されること、刈草にもいろいろで、刈る時期によっても、草の種類によっても含まれる成分も働きも様々であること、自らの経験をもとに想像力を働かせることで、より多くの事を知り得たと思います。畑を肥やすために、手に入りうるかぎり多種多様な有機物を入れ、様子を見続け、手入れをしてきたことでしょう。仕事の一つひとつが他人の受け売りではなく、各自の信念と経験から培うものだったと思います。

私自身、とにかく畑でそのものを見続け、分からないことの答えを人に訊くのではなく、畑の中で見つけるようになった頃から、少しずつ展望が見えてきました。作物の生育をコントロールし量産しようとすれば、ことは複雑難解になりますが、その発想を捨てれば、やるべきことは当たり前の積み重ねしかありません。農業はひとそれぞれ。小規模だからこそのやり様もまたあると思います。

あくまで、作物は育てるものであって、作るものではないというのが、いく農園の大事にしたいところです。

 

 

 

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いく農園の畑では今、、、

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